野菜の栽培には、土を使う方法が一般的です。しかし、近年は土を使わない水耕栽培が導入されています。水耕栽培のメリットは、水の管理がしやすいことと虫の発生が抑えられることです。また、水耕栽培では根から栄養分や水分を十分に取り入れることができ、土栽培より野菜の生育がいいというメリットもあります。
水耕栽培の培地として多く取り入れられているのは、ロックウールです。ロックウールはさまざまな種類の野菜栽培に利用され、農家でも使われている固形培地の1つ。ロックウールは古くから利用されてきましたが、性質や使い方などはまだ広く認知されていないことが多いものです。
今回は、水耕栽培の培地として使うロックウールについてご紹介します。野菜の水耕栽培にぜひ生かしてみてください。
1.ロックウールとは?
ロックウールは、水耕栽培の培地として利用されています。構造は2層構造です。上は高密度で、下は低密度の繊維で構成され、根の発育に最適な培地となっています。
1-1.成分
鉄鉱石などから鉄を取り除き、コークスや石灰石と混ぜて高温で溶かし、綿あめ状に繊維化して圧縮熱処理を施したものをロックウールと呼んでいます。ロックウールは無機質で無菌であるのが特長で、95%以上の空間を内部に維持している培地です。通気・保水・保肥性に優れています。
土栽培より植物の生育が早く、害虫の発生も少ないとされているのです。狭い場所でも栽培が可能だというメリットもあります。
1-2.構造
2層構造であるメリットは、上層に根が広がりやすく、水が均一に広がるため、発育に優れていることです。土やヤシ殻といった有機培地とは性質も違います。水分管理をきちんと行うことで、より高い収穫が得られる培地です。
ロックウールは排水性がありません。上から水を与えると根が伸びようとせず、生育に影響してしまいます。使用時は、ロックウールの下から水を与えられるように設置してください。
2.ロックウール栽培とはどんな栽培方法なのか
土栽培とは異なり、水耕栽培の培地はさまざまな種類があります。培地の1つがロックウールであり、発芽に最適だといわれる鉢です。
2-1.種植え
カルキを抜いた水にロックウールを浸(ひた)し、よく濡(ぬ)らした後に絞ってください。絞りきらず、滴る程度に抑えておきましょう。空気を含んだ状態で使用することをおすすめします。排水性と適度な水分量を維持するためです。ロックウールは保水性に富んでいるので、排水を意識した方がいいでしょう。ロックウールは水を張れる容器に入れて使ってください。
準備が整ったロックウールに、穴の空(あ)いた面を上にして種を植え、種まきは完了です。
2-2.発芽まではドームで管理
ほとんどの植物は、発芽に必要な温度を20〜30℃とされています。種まきの温度管理が難しい時期は、発芽保温ドームを使って温度管理をするのが一般的です。ヒーターマットの使用もいいでしょう。ヒーターマットは使用する面で温度が違います。温度が低い面と高い面がありますので、季節や環境に応じて使いわけてください。
発芽には暗くて暖かい場所がおすすめです。明るさは必要ありません。発芽まで3〜5日が目安です。
2-3.発芽後は発根促進剤を使用
発芽が確認できたら、ロックウールに水の補給を行います。根がしっかり育つよう、水に発根促進剤を加えて使いましょう。ロックウールの下に水が含むように浸(ひた)し、適度に絞ってください。発根促進剤を含んだ水を与えるときのポイントは、上から水をかけないこと。上から栄養分が加わると、根の成長を抑制するためです。しっかりした根を育てるために注意したいポイントでしょう。
3.ロックウール栽培に必要なもの
水耕栽培を始めるにあたり、用意したいものがあります。初心者の方はぜひ参考にしてみてください。
3-1.道具
水耕栽培では、ロックウールを設置するための容器などを準備します。植物の栽培には水が必要ですが、養分を含んだ液体肥料を加えた水を使用してください。土栽培では土中から養分を吸い上げて生育します。しかし、水耕栽培では液体肥料を溶かした水溶液を、根が栄養を吸い上げて成長しているのです。容器内に酸素が供給できるような酸素キットも設置するといいでしょう。
3-2.水耕栽培キットの利用
初心者で揃(そろ)えるものがわからないという方は、水耕栽培キットを用意すると便利です。必要なものがすべて揃(そろ)っており、1つ1つ準備する手間もかかりません。失敗も少ないので、ぜひ試してみてください。
3-3.植物の生育に必要な条件は?
植物の栽培には、水耕栽培でも土栽培でも必要なものは共通しています。
- 太陽光(光合成に必要。LEDでも代用可能)
- 二酸化炭素(光合成を行うためには空気中の二酸化炭素も必要)
- 酸素(細胞活発化には、葉や根から酸素の供給が必要)
- 肥料(根から十分な栄養を吸い込んで成長する)
- 水(生命維持には水は必要不可欠)
4. ロックウール栽培に適した植物・野菜
ロックウールを使った栽培は、トマト・いちご・バラに最適です。ロックウールは根をしっかり支えますので、水・酸素・肥料などの条件が十分なら、より多くの収穫を望めます。稲の生育にも向いており、水稲育苗マットとしても活用されているもの。ビルの屋上に設置されることもあり、地球温暖化対策でも注目されている栽培方法です。
5.育てる際の注意点
ロックウールを使った栽培方法は、土栽培より多くの収穫を得ることができます。ロックウールを使用するときは、種のとがった部分を上に向けて種植えをしてください。逆さまに種植えをし、下向きに発芽することがあります。ロックウールの表面に芽が出ないこともあり、注意が必要です。
まとめ
ロックウールを使った水耕栽培についてご紹介しました。
- ロックウールとは?
- ロックウール栽培とはどんな栽培方法なのか
- ロックウール栽培に必要なもの
- ロックウール栽培に適した植物・野菜
- 育てる際の注意点
ロックウールは鉄鉱石などから鉄を取り除き、コークスや石灰石と混ぜて高温で溶かし、綿あめ状に繊維化して圧縮熱処理を施したもの。通気・保水・保肥性に優れています。水耕栽培の培地であるロックウールは、より多く収穫が得られる新しい栽培方法です。水に浸(ひた)した後は滴る程度に絞り、空気を含んだ状態で使用することをおすすめします。ロックウールを使用するときは、逆さまに発芽しないように種のとがった部分を上に向けて種植えをしてください。