水耕栽培とは、土を使わずに、液体肥料を入れた水溶液で植物を育てる方法です。ヒヤシンスの球根を水耕栽培したことがある、という方もいるでしょう。また、カイワレ大根など一部の野菜はすでに水耕栽培が主流です。現在は、家庭でも水耕栽培が気軽に行えるキットも販売されているため、水耕栽培にチャレンジしてみたいという方もいると思います。その一方で、水耕栽培の安全性が気になるという方もいることでしょう。
そこで、今回は水耕栽培の安全性について解説します。
この記事を読めば、水耕栽培を上手に行うコツも分かることでしょう。水耕栽培に興味がある方は、ぜひ読んでみてくださいね。
1.水耕栽培って何?
水耕栽培とは、前述したように土の代わりに、液体肥料を水に溶かした水溶液で植物を栽培する方法です。太陽光の代わりとなるLED電灯があれば、室内で野菜を生育することもできます。現在の農業は、天候によって収穫が大きく左右されますが、室内で水耕栽培を行えば、1年を通じて安定した収穫をのぞめるでしょう。
2011年に発生した東日本大震災では、津波によって多くの農地が塩害の被害を受けました。そのため、農地に新しく水耕栽培を行う建物を建設し、農業を再開した農家もいます。また、国や自治体が水耕栽培の施設に助成金を出しているため、現在は他業種から水耕栽培事業に参入する企業も珍しくありません。
2.水耕栽培と安全性について
この項では、水耕栽培の安全性について解説します。室内で植物を栽培して、体に影響はないのでしょうか?
2-1.水耕栽培に必要な道具
水耕栽培に必要なのは水と液体肥料だけです。液体肥料とは、植物が成長するために必要な窒素・リン・カリウム・カルシュウム・マグネシウムなどが主成分であり、人体に悪影響はありません。土壌栽培に使う有機肥料と同じようなものです。
また、室内で水耕栽培を行えば、土壌や害虫を介して植物が病気になる可能性も低くなります。そのため、基本的に農薬は必要ありません。ですから、水耕栽培では土壌栽培よりも簡単に無農薬野菜が栽培できます。
2-2.成長を促す薬剤などは使わないの?
植物の成長には、適度な栄養と日光があれば大丈夫です。露地栽培では、日光不足や水不足などで植物がうまく育たないこともありますが、室内で水耕栽培を行うと、水も日光も野菜にとって最適な状態で与えられます。そのため、水耕栽培は土壌栽培に比べ、1.2倍ほど成長が早いのです。成長を促す薬剤などを使うことはありません。
2-3.栄養価について
水耕栽培で植物を育てると、植物の根は最も効率的に栄養を吸収する形で成長していきます。土壌栽培のように土を割って根を伸ばす必要はないため、根から吸収した栄養はすべて葉や実に送られるのです。そのため、水耕栽培のレタスと土壌栽培のレタスを比べた場合、水耕栽培のレタスの方がビタミンCが2.4倍・βカロチンやビタミンAは10.6倍も多く含まれます。
3.水耕栽培のメリットとデメリット
- 天候に収穫量などが左右されることなく安定した収穫がのぞめる
- 病気や害虫による被害がほとんどないので、より簡単に無農薬栽培ができる
- 土汚れがつかないので、洗浄の手間が省ける
- 建物や栽培方法を工夫すれば、狭い場所でたくさんの植物を生産できる
- 栄養価の高い野菜を短期間で作ることができる
というメリットがある一方、
- 水耕栽培を行う建物の建設費などのコストが高い
- 安定して収穫できる野菜が、レタスやハーブ類などの一部の野菜に限られる
- 野菜が旬の時期は、土壌栽培に比べると値段が割高になってしまう
- 停電になると野菜栽培が行えなくなる
といったデメリットがあります。これが克服できれば、水耕栽培は農業の主流になるかもしれません。
4.家庭で水耕栽培を始める方法
この項では、ご家庭で簡単に水耕栽培を楽しめる方法を紹介します。ぜひ、参考にしてください。
4-1.水耕栽培で育てられる植物
初心者が水耕栽培を始める場合、ベビーリーフやハーブ類など、成長が早い葉物野菜がおすすめです。慣れてきたら、トマトやイチゴなど結実する野菜や果物を育ててみましょう。なお、現在のところ、根菜類を水耕栽培で育てるのはたいへん難しいので、根菜類を育てたい場合は、土壌栽培を利用してください。
4-2.栽培地は手作りできる
液体肥料を溶かした水溶液を底の浅い器に入れ、そこに切れ込みを入れたスポンジを浸せば、ごく簡単な水耕栽培の培地が完成します。お金をかけずに水耕栽培を始めたいという方は、まずはこの方法で水耕栽培を行ってみましょう。液体肥料は、園芸店やホームセンターで手に入ります。栽培地や水がカビないように水をこまめにかえれば、1か月くらいでベビーリーフなどは育つでしょう。
また、ペットボトルの上部3分の1程度を切り、残った部分に水溶液を入れ、切り取った上部をひっくり返して水溶液に差し込んだものでも、水耕栽培うぃ行うことができます。ハイドロボールなど、素焼きで水をよく吸う素材を苗床としてペットボトル上部に入れ、そこに植物の苗を植えてみましょう。ある程度根が広く張る植物でも栽培できます。
4-3.全部そろったキットもおすすめ
水耕栽培に必要な道具がすべてそろったキットも、いろいろなところで販売されています。中には、インテリアとして使えるようなスタイリッシュなものもあるので、観葉植物代わりに野菜を育ててみてもよいでしょう。水耕栽培どっとねっとでも、キットを販売しています。
キットを使えば、買ったその日から水耕栽培を始められるので便利です。
4-4.水耕栽培を行う際の注意点
水耕栽培は、基本的に室内で行います。日当たりの良い場所に水耕栽培の培地を置いてあげましょう。外に出す必要はありません。窓のない部屋でも、LEDライトを使えば水耕栽培を行えます。
また、根にも酸素が必要です。根が完全に水没しないように気を配りましょう。どうしても水没してしまう場合は、エアーポンプで水中に酸素を送る方法もあります。
5.水耕栽培に対するよくある質問
Q.液体肥料は、そのまま排水口に捨てても大丈夫ですか?
A.はい、肥料を溶かした水溶液ならば問題ありません。
Q.水耕栽培は、種からと苗から、どちらから始めればよいでしょうか?
A.どちらでも大丈夫ですが、一般的に苗から育てる植物は苗から育ててください。
Q.栽培キットは再利用できますか?
A.再利用ができるものもありますが、使いきりのものもありますので、購入する前に確認しましょう。
Q.水耕栽培中、2・3日留守にしていても大丈夫ですか?
A.問題ないでしょう。水溶液を新しいものと替え、日当たりの良い場所に置いておけば大丈夫です。
Q.水耕栽培で観葉植物は育てられますか?
A.もちろんです。ただし、観葉植物の中には大きくなるものもあるので、ハイドロボールなどを使って土台固めをしましょう。
6.おわりに
いかがでしたか? 今回は、水耕栽培の安全性について解説しました。使用するのが液体肥料と水だけですので、農薬などで土壌を汚染することもありません。また、栄養価の高い野菜が安価で食べられるようになるのは、うれしいことですね。ご家庭では、食育や自由研究として水耕栽培を行うのもよいでしょう。野菜嫌いのお子さんも、自分が作った野菜なら食べられるという例は多いものです。土壌栽培と併せて行ってみても、育てられる野菜の種類が多くなります。