土を使わず水と液肥だけで野菜を育てる水耕栽培では、ナスも栽培できます。水耕栽培は農薬を使わないので、体にやさしく新鮮でおいしいナスを気軽に食べることができると好評です。正しい栽培方法とポイントを押さえておけば、楽しく上手に栽培できるでしょう。本記事では、ナスの水耕栽培とポイントなどを解説します。
この記事を読むことで、ナスを水耕栽培で育てる方法が分かります。気になっている方は、ぜひチェックしてください。
1.ナスは水耕栽培で栽培できる
水耕栽培で有名なのはベビーリーフや小松菜などの葉野菜ですが、ナスも育てることができます。ここでは、水耕栽培で育てる特徴を解説しましょう。
1-1.水耕栽培は水と液肥だけで育てる
ナスも育てることができる水耕栽培は、水と液肥だけで育てる栽培方法です。一般的なナスの栽培は土を使いますが、水耕栽培は一切使いません。そのため、ベランダや庭はもちろんのこと、窓辺やキッチンの空きスペースなど室内でも育てることができます。根っこの部分を液肥が入った水につけることで、そこから成長に必要な養分を吸収し成長するという仕組みです。ただし、水耕栽培でも光合成を行うための酸素と光は必要となります。
1-2.ナスの水耕栽培は初心者向け
注目度が上がってきたといっても、水耕栽培はまだ馴染みがない栽培方法です。そのため、「初心者にとっては難易度が高いのでは……」と不安になる方が多いですが、ナスの水耕栽培は初心者向けなので安心してください。ただし、基本的な栽培方法とポイントはしっかり押さえておく必要があります。何も知らずに栽培を始めるのと、きちんと知識を習得してから始めるのとでは、実のつき方にも大きな違いが出るでしょう。
1-3.おすすめの品種は中長ナス
ナスにはさまざまな形・サイズの種類がありますが、水耕栽培でおすすめしたい品種は中長ナスです。中長ナスは、13〜15cmほどの長卵形が特徴で、スーパーなどにも多く流通しています。初心者でも気軽に育てやすい品種といえるでしょう。ほかには、コロッとした形でソフトボールほどのサイズの丸ナスも栽培できます。どちらも焼き物・揚げ物などさまざまな調理に使えるので、家庭菜園を楽しみながら食費の節約にもなるはずですよ。
2.ナスを水耕栽培で育てる前にチェックすべきこと
ナスを水耕栽培で育てる前に、適した栽培時期・環境・用意するものをチェックしておきましょう。
2-1.ナスの栽培時期は種まきが2月中旬、苗植えが5月ごろ
ナスの栽培時期は、基本的に土で栽培する方法と同じです。一般的に、種まきが2月中旬、苗植えが5月上旬~中旬ごろとなります。そして、7~10月に収穫するという流れです。ただし、前述したように、室内で育てる水耕栽培は天候の左右を受けないので、早めに発芽し収穫できる可能性があります。順調に育てるためには、適した環境で育てることが大切です。
2-2.発芽・生育適温、日照条件をチェック!
ナスを種から育てる場合、発芽適温となる25~30℃をキープすることが重要なポイントです。また、ナスの種は強い光を嫌うので、なるべく発芽するまで日陰に置いたほうがいいでしょう。昼と夜の温度差もあまり激しくならないように気をつけるべきです。生育適温は約22~30℃となっています。気温が35℃以上になると実つきが悪くなるので注意してください。特に、夏場は室内の温度が上昇しやすいため、風とおしが良い場所で育てましょう。通常は、半日以上の日当たりが必要なので、午前中はやわらかい日差しが当たる場所に置き、日差しが強くなる日中は日陰に移動させるのが理想です。
2-3.用意するもの
ナスを水耕栽培で育てる場合、基本的に以下のアイテムがあれば十分に育てることができます。
- プラスチックやペットボトルなどの深い容器
- 土台となるスポンジ・培地
- 苗または種
- 液体肥料
水耕栽培は土を使わないので、植物の根を固定させる培地が必要です。培地には、ウレタン発泡樹脂やロックウールなどを使います。発芽から始める場合は、土台となるスポンジのほかに、フタつきのプラスチック容器を用意するといいでしょう。
2-4.エアポンプや植物用ライトを活用する
スムーズにナスを栽培するため、水耕栽培にエアポンプや植物用ライトを用意するのも選択肢の1つです。必ず用意しなければならないものではありませんが、そろえたほうが育てやすくなります。エアポンプは十分な酸素を送り、植物用ライトは太陽光の代わりに光を当てることができるアイテムです。室内で育てる水耕栽培だからこそ、育生を手助けしてくれる道具も使ってみてはいかがでしょうか。
3.ナスを水耕栽培で育てる方法と注意点
それでは、ナスを水耕栽培で育てる方法と注意点を解説します。
3-1.栽培手順
基本的な水耕栽培の手順は以下のとおりです。
- スポンジを小さく切り、中心に十字の切り込みを入れる
- スポンジを湿らせた後に、切り込みを入れた中心に種をのせる
- 湿らせたスポンジが乾かないように、水をためた容器に入れる
- 水が不足したり汚れたりしないよう、毎日水を入れ換える
- ナスの場合は、発芽までフタをして風通しのいい暗い場所で管理する
- 発芽し双葉が大きくなってきたら、スポンジ単位でペットボトルやガラスなどの容器に移す
- ペットボトルを1/3のところで2つにカットし、飲み口が下になるように挿し込む
- アルミホイルを巻いて藻(も)の発生を防ぐ
- スポンジをペットボトルの口に差し込み、下のペットボトルに液体肥料を入れた水を入れる
ペットボトルで発芽した苗を育てる場合、根の先端を液肥入りの水につけることがポイントです。もし、根が水まで届かないようなら、ポリエステル製のフェルト布をスポンジにつけて水を吸い上げられるようにしてください。そして、直射日光が長時間当たらない明るい場所で育てます。
3-2.収穫までは約半年
ナスは、発芽から約半年で収穫できます。ただし、栽培環境によって異なり、苗からならもっと収穫まで時間がかかりません。また、LEDの植物用ライトを活用すれば、室内でも生育が早くなり、安定した収穫を得ることができるでしょう。植物用ライトを選ぶ際は、光量が1,000〜1,500lxのライトがおすすめです。1,000lx以下のライトでは光量が足りず、植物の生育環境が悪くなるので注意してください。
3-3.ナスの収穫は気温の涼しい早朝がベスト
葉が大きくなり、実の成長が手元で確認できるようなら、収穫も間近です。ナスの収穫は、気温の涼しい早朝がベストといわれています。気温が上がると果実表面のツヤがなくなってしまうので、実が成長し始めたら毎朝状態を確認してみてください。収穫の際は、実に傷をつけないようハサミで収穫します。水耕栽培でも脇芽を伸ばしながら収穫することになるため、実だけでなく、実がなった脇芽の根元にある葉1枚と新しい脇芽を残して、実と枝を切り取るのがポイントです。そうすれば、残した脇芽が成長し、新たな実がつきやすくなるでしょう。
3-4.直射日光に当てるのはNG
ナスを直射日光に当てて育てるのはNGです。発芽まではもちろんのこと、室内で育てる場合もなるべく直射日光が当たらないレースカーテンで遮られている場所に容器を置きましょう。日光が当たらない室内で育てる場合は、前述した植物用ライトを活用するのも方法の1つです。植物用ライトには、さまざまな種類があるのでインターネットサイトなどで確認してください。「水耕栽培どっとネット」では、多種多様な道具がそろっていますよ。
3-5.液肥を与えすぎてはいけない
水耕栽培で育てるためには、植物の栄養となる液肥が必要不可欠です。水耕栽培では、ハイポニカなどの液肥を使いますが、水で500倍程度に薄めて使います。薄めずに使用したり、液肥を与えすぎたりすると、ナスが枯れてしまうので注意してください。液肥はきちんと規定量どおり薄め、適切な量を入れることが大切です。
3-6.pHを弱酸性に保つ
ナスの実つきをよくしたい・大きく育て上げたいという方は、pHに注意するといいでしょう。pHは水素イオンの濃度を示している数値です。ナスの場合、pHは6.0~6.8の弱酸性がベストだといわれています。pH計や調整液なども販売されているので、ぜひチェックしてみてください。乾燥に弱い野菜なので、特に冬場はpHに注意したほうがいいでしょう。
3-7.根腐れに要注意
液肥入りの水は常にキレイな状態にしておきましょう。できれば、毎日新しい水に交換してください。水をいつまでも放置しておくと藻が生えたり、細菌が発生したりなどで根腐れを起こしてしまうおそれがあります。根腐れは、水耕栽培でよくある失敗なので要注意です。また、水を換えても根腐れが起きる場合は、酸素が足りていない可能性があります。十分な酸素が根に行きわたるよう、酸素ポンプを活用するのも根腐れ対策の1つです。
3-8.初心者は専用キットがおすすめ
自分で栽培キットを作るのが面倒で不安な方は、専用キットの購入がおすすめです。「水耕栽培どっとネット」では、家庭菜園キットの「エアロガーデン」があります。エアロガーデンは、誰でも水耕栽培ができる画期的なシステムを導入しているので、手間をかけることなく気楽に育てることができるでしょう。専用キットのほかにも、植物用ライトや酸素ポンプなど水耕栽培に役立つアイテムがそろっているのでぜひチェックしてください。
4.ナスの水耕栽培に関してよくある質問
ナスの水耕栽培に関する質問を5つピックアップしてみました。
Q.水耕栽培で育てる大きなメリットは?
A.水耕栽培は農薬をまったく使わないので安心です。また、子どもがいる場合は、自分で育てた野菜を収穫し、おいしく食べることが食育につながります。土を使わないので土づくりが苦手な方や、ベランダ・庭などスペースがない方でも気軽に育てることができるでしょう。小さなスペースでも栽培が楽しめるのは、水耕栽培の大きなメリットの1つです。
Q.生育の注意点は?
A.1番初めについた実は早めに収穫することです。最初の実を残すと、株に大きな負担がかかってしまいます。乾燥した日が続いたときは、ハダニなどの害虫がつきやすくなるので葉の後ろに水を少しかけてください。また、生育初期に液肥を与えすぎると、茎が細くなったり、葉の間隔が長く間伸びしてしまったりします。初期収穫量が極端に少なくなるので、液肥を与えすぎないようにしましょう。
Q.いい苗の選び方は?
A.できるだけ節の太いしっかりとした苗は、ペットボトルなどの容器に固定しやすくなります。また、実もつきやすいので、節に注目しながら状態のいい苗を選びましょう。苗選びに迷ったときは、園芸店のスタッフに相談してください。ポイントを聞きながら、ベストな状態の苗を選ぶことができます。
Q.ナスの水耕栽培でかかりやすい病害は?
A.水耕栽培は土で育てるよりも害虫や病害にかかるリスクが低くなりますが、絶対にかからないわけではありません。水換えをしなかったり、直射日光に当てたりすると、細菌に感染し、灰色かび病・すすかび病・うどんこ病などにかかる可能性があります。病気にかかると、ナスの葉や茎が変色し、実が変形するでしょう。異変が起きていないか、できるだけ毎日チェックしてくださいね。
Q.水換えの際に気をつけておくべきことは?
A.容器が汚れていないかチェックしておきましょう。毎日新しい水にすることは大切ですが、容器自体が汚れてしまっていては意味がありません。容器についている藻やホコリなど、定期的に掃除するなどしてキレイな状態を心がけましょう。
まとめ
ナスは水耕栽培に適した野菜の1種です。種まきから収穫まで半年という短い周期でおいしいナスを自宅で食べることができます。特に、水耕栽培は室内で行う栽培方法なので、天候に大きな影響を受けません。こまめに水を換えたり、肥料を与えすぎたりしないなど、栽培方法の基本とポイントを押さえておきましょう。初心者は栽培キットを用意するのが大変なので、専用キットを活用するのがおすすめです。