最近、自宅で家庭菜園を始める人が増えています。しかし、しっかりとした知識を持たずに始め、連作障害が起きてしまう人も少なくないようですね。
連作障害が発生する大きな原因は、収穫後に正しいお手入れをしなかったことによります。では、どんなお手入れをすればよいのでしょうか。
今回は連作障害を起こさないために必要な、収穫後のお手入れ方法を中心にご紹介していきます。ぜひ、最後までお付き合いくださいね!
目次
1.収穫後は家庭菜園のお手入れをしよう
野菜は茎や葉が柔弱で病害虫に侵されやすい植物です。収穫したとき病気になっていなくても、実際には茎や葉、土壌の中に長い間生存しています。そして、次に栽培したときに被害を及ぼしてしまうのです。たとえば、アブラナ科の『萎黄病(いおうびょう)』やナス科の青枯れ病、ウリ科の『つる割病(つるわれびょう)』などは土に埋まっていた茎や葉、土壌から伝染します。
また、線虫(せんちゅう)は多くの野菜の根に寄生して残り、『根こぶ病』や『根腐れ病』などの病気を起こしやすくする寄生虫です。
では「病害虫の被害に悩まされないためには病害虫に強い野菜を育てればいいのかな」と思われるかもしれません。しかし、残念ながら、家庭菜園に向いている野菜の多くは病害虫に侵されやすい野菜ばかり。ですから、その処理の仕方に注意することが大切なのです。
お手入れで最も重要なことは土壌中に茎や葉を残さないこと。1番手っ取り早い方法はまとめて焼却してしまう方法です。しかし、住宅地などでは燃やすのは難しいでしょうし、水分を多く含む茎や葉だとうまく燃やせないこともあります。そのような場合は、堆肥(たいひ)の材料にするとよいでしょう。
1-1.堆肥の作り方。
堆肥の作り方は野菜や土に含まれる栄養素によって作り方が変わってきます。基本の作り方は以下のような手順です。
- 土の上ボカシ肥料を少量まく
- 小さくちぎった茎や葉を土に乗せる。
- 水、米ぬか、油かすをまんべんなく全体にまく
- 1~3の工程を何度か繰り返してミルフィーユ状にする
2.連作障害の原因
同じ場所で連続して栽培すると生育が極端に悪くなったり、枯れてしまいます。この現象が連作障害です。
連作障害が起きる原因は大きく分けて3つあります。
- 線虫による障害。
- 土壌微生物による病害。
- 土壌の悪化。
2-1.線虫
線虫というのはその名のとおり細長い線のような虫で、小さなミミズのような形が特徴。実際、線虫の9割は自活線虫と呼ばれ、ミミズと同じような働きをしています。
問題なのは残りの1割である寄生線虫と呼ばれる線虫です。線虫はとても偏食な生き物で、それぞれがサツマイモやトマトなどの好みを持っています。同じ野菜を連作するとその野菜を好きな線虫が増えていくため、根などを食い荒らされて野菜が弱ってしまうのです。
違う野菜を植えると線虫は好みを変えられないので対応できず、数が減ります。
2-2.土壌微生物
病害を引き起こす土壌微生物の多くはカビです。カビは植物の防御壁を溶かして細胞の中に侵入する能力があります。
同じ作物を繰り返して作ることによって繁殖しますが、水田では毎年お米を作っても連作障害にはなっていませんよね。これは連作障害を起こす原因が好気性菌(酸素が必要な菌)のカビだからです。水田は水を張ることで酸素が遮断された嫌気状態(酸素のない状態)なのでカビが繁殖せず、連作障害になりません。
2-3.土壌の悪化
土壌の悪化には養分の過不足によって発生します。土壌の養分は分析キットで簡単に判別できますので、通販やホームセンターなどで購入して確認しておきましょう。
3.連作障害を防ぐには
3-1.連作障害の出やすい野菜を把握しておく
連作障害を避けるには休栽期間(連作障害を防ぐために、同じ場所に同じ作物を植えることを避ける期間)を設ける必要があります。連作障害の出やすい野菜とその休栽期間を覚えておきましょう
- 7年以上休栽……エンドウ、ナス、スイカ
- 5~6年休栽……ゴボウ、トマト、ピーマン、サトウダイコン
- 3~4年休栽……ダイズ、シロウリ、ナガイモ、サトイモ
- 2年以上休栽……キュウリ、ジャガイモ、インゲン
3-2.連作障害の出にくい野菜を把握しておく
連作障害に強いと呼ばれる野菜には以下のようなものがあります。
- サツマイモ
- コマツナ
- カボチャ
- ニンジン
- タマネギ
- ネギ
- シュンギク
- ニンニク
- ショウガ
- フキ
これらの野菜はあくまで連作障害に『強い』というだけで、場合によっては連作障害が起こることもあります。同じ種類の野菜を毎年同じ場所に作ることは、決してよいことではありません。
3-3.連作障害を防ぐ方法
連作障害を防ぐためには休栽しなくてはいけないとはいえ、このようなことではすぐに栽培できる野菜がなくなってしまいます。どのように対応すべきなのでしょうか。
1番簡単なのは接ぎ木苗を利用したり耐病性の品種を利用することです。連続して植えつけても連作障害が発生しにくく、次に植えるまでの期間を短縮できるでしょう。
病気が原因になっている場合は、土壌を消毒すれば連作障害を避けることができます。おすすめの土壌消毒法は太陽熱を利用した方法です
太陽熱による消毒法
- 収穫後、野菜くずを取り除く。
- 切り藁(わら)を1平米辺り2~3kg、石灰窒素を1平米あたり100~150g混ぜる。
- 土に水をため、水田のようにしましょう。できない場所の場合はたっぷりと水をかけてください。
- 古ビニールで表面をぴったりと覆い(マルチング)、乾かないようにします。
- 2週間ほど放置しましょう。
- ビニールを外してよく乾燥させ、耕して畝を作ります。この際、元肥は控えめにするのがポイントです。
太陽熱による消毒法は日差しの強い夏が適しています。梅雨明けから8月中に行いましょう。
4.種子を保存しておこう
家庭菜園のお手入れが終わったら種子の保存をしましょう。
小さな自家菜園では、購入した種子をシーズン中に全部使い切れず余ってしまうことがよくあります。ものによってはネット通販でしか買えない地方野菜や珍しい種類の野菜など、来年も利用したい場合もあるでしょう。そのようなときには種子を保存すればよいのです。
しかし、種子はしっかりとした方法で保存しないと、1年後には発芽しなくなっている場合があります。たとえば、タマネギは無造作に放置していれば1年でほとんど発芽しなくなってしまう野菜です。中にはナスのように3~4年たっても発芽する野菜もありますが、いずれも放っておくと発芽率がどんどん悪くなってしまいます。
種子は少しの手間をかけるだけで長期保存が可能です。来年あるいは再来年まで使えるように、しっかりとした方法で保存しておきましょう。
4-1.種子の発芽力を保つために注意すべきこと
種子の発芽力が落ちる原因は大きく分けて4つあります。
1つ目は『光』です。光に長期間さらされると酸化ストレスがかかって発芽率が低下してしまいます。
2つ目は『酸素』です。種子の呼吸によって種子内部の養分が減って発芽率が落ちてしまいます。
3つ目は『湿気(水分)』です。湿気によって病原菌が増殖したりすると種子が劣化して発芽率が落ちてしまいます。
4つ目は『温度』です。種子の保存には低温であることが好ましく、温度が5度下がるごとに寿命が倍になるといわれています。そのため、高温の場所にさらされると種の劣化が早くなるでしょう。
つまり、理想的な種子の保管条件は『暗所+密閉空間+低湿度+低温』となります。ではこの条件を守って保存するにはどうすればよいのでしょうか。
4-2.種子の保存方法
誰にでもできる手軽な貯蔵方法はジップロックを使った方法です。
- ジップロックのような密閉フリーザーバッグに種子を入れる。
- 食品用の乾燥剤を入れましょう。この乾燥剤は湿気を吸うとだんだん膨らんで効果が落ちていきます。定期的に新しいものと交換してください。
- できる限り空気を抜いて密閉してください。
- 冷蔵庫に保存します。この際『冷凍庫』を使った保存は難しいので初心者は避けましょう。
種子は低温の場所を好み、うまく冷凍保存できれば、数百年以上も保存が可能になるといわれています。では、なぜ初心者は冷凍庫を避ける必要があるのでしょうか。
低温であった方が種子の保存環境的にはよいのですが、種子の内部に水分が少しでも残っていた場合、細胞内で水が結晶化して細胞構造を壊してしまう危険があるからです。ですから、乾燥の判断が困難な初心者には向いていません。
また、うまく保存できても冷凍では解凍に手間がかかります。数十年以上保存する必要がなく、数年保存したいだけならば、使い勝手という部分でも冷蔵の方が優れているでしょう。
もちろん、自信があるのなら冷凍による保存をしても構いません。
室温から冷凍する際は、1日冷蔵させます。この間に生石灰や乾燥剤による乾燥させておきましょう。室温から急激に冷凍させると、種子内部の水分が膨張して細胞が破壊されてしまうからです。
解凍時には、冷凍庫から室内へジップロックを出し、結露がなくなって内容物が室温に戻った後に開封します。最低でも1日、できれば2~3日は置いてから開封しましょう。
まとめ
いかがでしたか?
今回は家庭菜園で野菜を収穫した後にすべきことについてご紹介しました。
- 収穫後は家庭菜園のお手入れをしよう
- 連作障害の原因
- 連作障害を防ぐには
- 種子を保存しておこう
連作障害が出るとせっかくの苦労が水の泡です。おいしく安全な野菜を育てるためにも、しっかりと菜園の管理を行いましょう。