近年、家庭菜園がブームになってきています。この家庭菜園ブームに乗って人気を徐々に高めているのが『水耕栽培』です。水耕栽培は土を使わずに栽培できることから、初心者でも手を出しやすく、主婦を中心に広がってきています。
しかしながら、水耕栽培には「栄養価が低そう」や「味が悪そう」といったイメージを持つ方も珍しくありません。そのため、手を出すのを躊躇(ちゅうちょ)している方も多いと思います。では、水耕栽培では栄養価が低く味が悪いというのは、はたして本当のことなのでしょうか?
今回は水耕栽培の栄養と味について中心にご紹介してきます。
これらの記事を読むことで、水耕栽培における基本的な知識を得ることができます。これから水耕栽培を始めようという方も、すでに始めているという方も、ぜひ最後まで目を通してみてくださいね!
1.水耕栽培で作ることのできる青果物について
水耕栽培で作ることのできる青果は、主に以下のようなものがあげられます。
- レタス
- サラダ菜
- サンチュ
- 春菊
- 新芯菜(しんしんさい)
- 水菜
- 野沢菜
- わさび菜
- チンゲンサイ
- 大葉
- ルッコラ
- ターサイ
- 小松菜
- イタリアンパセリ
- バジル
- クレソン
- パクチー
- スペアミント
- ペパーミント
- ミニトマト
- ミニカブラ
- ラディッシュ
- イチゴ
このように、意外にも多くの野菜や果物を水耕栽培することができます。しかしながら、中には育てるのが難しいものも多いのが現状です。そのため、一般的に水耕栽培で育てられているものは限られています。
家庭で育てられているものとしては『ミニトマト』『レタス』『水菜』『小松菜』『バジル』『パセリ』『ミント』『大葉』などがあげられるでしょう。特に、ミニトマトは作りやすく用途も多いので人気があります。
2.水耕栽培の栄養価について
2-1.水耕栽培で作られた青果の栄養について
何となく、土で栽培した青果物は栄養満点で、水耕栽培で作られた青果物は栄養素が低そうなイメージがありませんか? 実はこの認識は間違いです。水耕栽培で作られようと、土の栽培で作られようと、野菜の栄養素はほとんど変わりません。むしろ、水耕栽培で作られた青果物の多くが、土で栽培されたものよりも栄養価が高いことが研究によって明らかになっています。
2-2.土栽培との比較
なぜ、水耕栽培の方が栄養価が高まるのかというと、土の栽培に比べて安定した生育が可能だからです。土の場合、病害虫による被害に遭いやすいですし、雑草被害も多くありますよね。このような被害によって野菜の生育が悪くなると、栄養価が低くなりがちです。しかしながら、水耕栽培であれば病害虫の被害を押さえられますし、雑草被害に関してはそもそも発生しません。そのため、野菜本来の栄養を引き出すことができます。結果として、栄養価が高くなるというわけですね。
2-3.肥料と栄養価について
多くの人が勘違いしていますが、肥料によって与えられる栄養と野菜の栄養には直接の関係はありません。肥料というのはあくまで野菜の成長を助けるものです。ですから、肥料をたくさんあげれば野菜の栄養価も高くなるかというと、そんなことはありません。むしろ、栄養過多で植物が枯れてしまうこともあります。ですから、もしも自分で野菜や果物を栽培する際には、適切に肥料を与えるようにしてくださいね。
3.水耕栽培で作られた食品の味について
水耕栽培で作られた野菜や果物も、土で栽培されたものと同じかそれ以上の栄養価があります。では、味についてはどうなのでしょうか。
おそらく、多くの人も水耕栽培の野菜は土の栽培に比べておいしくないと考えていると思います。しかし、これは大きな間違いです。しっかりと管理されて作られた野菜は土栽培と比べても変わらないほどに味が良いといわれています。
ただし、中には味が水っぽいという人もいるようです。しかし、これは多くの場合水耕栽培であるという先入観からそう思っていることが多いでしょう。そもそも、土で栽培していても、おいしくない野菜というのはありますよね。分かりやすい野菜だとトマトなどがあげられるでしょう。おいしいトマトは青臭さがなくて、味も濃厚です。しかし、まずいトマトは青臭くて水っぽいだけの何だかよく分からないぼやけた味がしますよね。結局のところ、土栽培だろうと水耕栽培だろうと、味の決め手は作る人の腕次第ということなのです。
4.水耕栽培を始める方法
4-1.水耕栽培キットを購入しよう!
水耕栽培を始めるには水耕栽培キットというものが必要です。この水耕栽培キットはペットボトルなどで作られた使い切りタイプのものから、大型で機械的に管理し、何度も繰り返し使えるものまであります。
おすすめは、機械的に管理できる大型のものです。大型といっても、1株から作れる小さめのものから、数十株以上を栽培できるものまであります。
購入したら、後はそれぞれの水耕栽培システムの取り扱い説明書に従って野菜を育てていくだけです。もちろん、このようなシステムを取り入れず、ペットボトルなどで自作の水耕栽培システムを作ることもできます。しかしながら、やはり効率が悪いですし、後で本格的に始める方がほとんどです。そのため、最初からある程度設備を整えておいた方が二度手間になりません。本当においしい野菜を水耕栽培で作りたいのであれば、水耕栽培システムを導入しましょう。
4-2.おいしい野菜や果物を作るには?
おいしい青果物を作るには、以下の2点に注意する必要があります。
- 肥料を適切に与える
- 日照時間を確保する
もちろん、このほかにもいろいろと大切なことはありますが、1番重要なのはこの2点です。極論でいえば、この2点さえクリアーしていればまずいものはできません。
4-3.肥料について
水耕栽培では土を使いませんから、土用の肥料は使うことができません。水耕栽培用の肥料を用意しましょう。水耕栽培用の肥料として有名なものには以下のようなものがあります。
- GH社:GHフローラシリーズ
- CANNA社:Aquaシリーズ
- ボタニケアー社:ピュアブレンドプロシリーズ
- 大塚化学:ベジタブルライフシリーズ
- Hesi社:ハイドロシリーズ
- 協和株式会社:ハイポニカシリーズ
- 株式会社ハイポネックス:ハイポネックスシリーズ
おすすめは、大塚化学のベジタブルライフです。ベジタブルライフは初心者でも簡単に使えるという点で優れているので、水耕栽培を始めたばかりの人には特におすすめします。
もしも水耕栽培にある程度慣れてきたのであれば、人気の高いGHフローラシリーズがおすすめです。GHフローラはガーデニング大国のアメリカでシェアNo.1の実績があります。特徴は、作れる液肥のバリエーションが高いという点です。『Gro』『Micro』『Bloom』の3種類の液肥を混ぜ合わせて野菜に合った液肥を作成できます。
5.水耕栽培における質問と回答
5-1.水耕栽培キットの値段はどのくらいですか?
一般的に流通している栽培キットで人気が高いものは1~5株程度の栽培を想定したものです。このぐらいの規模の栽培キットであれば1~3万円程度が相場でしょう。
しかし、本格的にたくさんの野菜を栽培したいとなってくると話は別です。数十株の植物栽培を想定しているのであれば、値段が跳ねあがります。20株で5~9万円程度、60株ともなれば10~20万円程度です。もっとも、60株用となると自宅に置くのも大変でしょう。もてあましてしまいます。農業への導入を考えている人でなければ、多くても20株用程度で十分です。
5-2.液肥の『液性』とは何ですか?
液肥のラベルなどを見ると『1液性』や『3液性』といったような表記を見ることがあります。この液性とは、液肥が何分割されているかを表す値です。液性が大きくなればなるほど、液肥が栄養素ごとに分割されていきます。なぜ、分割しているのかというと、より自由な液肥を作り上げるためです。
たとえば、A液とB液に分かれた2液性だとすれば、A液の量を多めに配合してB液を少なくしたり、逆にB液を多くしたり、と自由度が上がりますよね。これによって、より野菜の育成に合った配合を作り出すことができるのです。つまり、液性が高ければ高いほど、液肥の配合パターンは多くなり、より野菜に合った液肥を作れるということになります。ただし、逆説的にいえば、配合パターンを理解できるほどの知識がないと液性の高い液肥は使えないということです。
初心者は1液性のものを使うのが無難でしょう。知識がある方は2~3液性のものに手を出してみてください。ちなみに、1液性であれば大塚化学の『ベジタブルライフ』、3液性のものであれば『GHフローラ』などが有名です。
5-3.液肥はどこで手に入れれば良いの?
液肥は園芸店やホームセンター、あるいはインターネットで購入するのが一般的です。おすすめはインターネットを使った方法でしょう。液肥は量によっては重くなることもあるので、運搬の手間がかからないからです。
5-4.液肥の希釈液は作り置きできますか?
液肥は通常、水で希釈して使います。人によっては、希釈した養液を作り置きしておけば手間を省けると思われるかもしれませんが、それは大きな間違いです。液肥自体には使用期限がないのですが、水を加えると化学変化を起こし、だんだんと劣化していってしまいます。だいたい、希釈してから1週間もたつと状態が悪くなっているでしょう。当然、そんな養液を与えれば植物にも悪影響が出てきてしまいます。ですから、できるだけ作り置きはやめましょう。どうしても時間的に作り置きしなければならないのであれば、翌日などに使ってしまうことが大切です。
5-5.初心者が1番はじめに育てるならどんな野菜や果物が良いですか?
土も含めて、野菜や果物を育てたことがないという方には、ミニトマトをおすすめしています。ミニトマトは小学生が授業で育てることも多い野菜ですよね。つまり、栽培が簡単な野菜ということでもあります。初心者でも失敗しづらいので、最初に栽培する野菜としては一押しです。
まとめ
いかがでしたか? 今回は水耕栽培における疑問や、基本的な知識についてお話ししました。水耕栽培は多くの方に誤解されています。栄養価が低く味も悪くなってしまう栽培法……そんな固定観念は捨てましょう。水耕栽培は土を使わないので病害虫にも遭いづらく、雑草被害も起こりません。さらに、家の中でも栽培ができるので、マンションやアパート暮らしの人でも始められます。しかも、手や服、家の中も汚れません。このように良いところがたくさんあるのです。ですから、今回の記事を一つのきっかけとして、ぜひ水耕栽培を初めてみてくださいね。