水耕栽培を行っていたら、突然植物が枯れてしまった。こんな経験がある人はいませんか? その原因は、酸素不足の可能性があります。植物は、葉や茎からだけでなく根からも酸素を吸収しているのです。根が酸素不足になれば、植物の生育が悪くなり、枯れてしまうことも珍しくありません。しかし「どうやって根に酸素を行きわたらせればいいか分からない」と悩んでいる人もいるでしょう。
そこで今回は、水耕栽培を行う際、酸素不足にならない方法や酸素不足になってしまった場合の解消方法を紹介します。
この記事を読めば、水耕栽培を成功させるためのコツがよく分かるでしょう。水耕栽培がうまくいかずに悩んでいる人は、ぜひ読んでみてくださいね。
1.植物と酸素の関係
植物は、「二酸化炭素を吸って酸素を吐き出す」というイメージを持っている人が多いと思います。これは、「光合成」で葉や茎など緑色をした部分で行われるものです。その一方で、植物は酸素を吸って二酸化炭素を吐き出す呼吸も行っています。呼吸は、植物全体で行うため、葉や茎だけでなく根からも酸素を吸収するのです。そのため、葉・茎・根のどこかから酸素を吸収できなくなってしまうと、植物全体が酸素不足になることもあります。
2.水耕栽培と酸素不足の関係
この項では、水耕栽培で酸素不足になる原因などを解説します。
2-1.水耕栽培で酸素不足が起こる理由
水耕栽培は、土の代わりに液肥を溶かした水溶液で植物を育てる方法です。水中にも酸素がありますが、土中より量が少ないため、根が伸びたり植物が成長したりしていくにつれ、酸素不足に陥りやすくなります。また、水は温度が上がるほど溶け込む酸素の量が少なくなるのです。そのため、夏場にだけ酸素不足になるということもあります。このほか、水耕栽培を行っている容器に対して、根が伸びすぎていても酸素不足になることがあるでしょう。
2-2.酸素不足になると植物はどうなるのか?
酸素不足になると、植物の成長が遅くなります。また、酸素不足がひどくなると植物が枯れてしまうこともあるでしょう。病気の枯れ方とは異なり、酸素不足になると数時間で植物全体の葉がしおれたりぐったりとしたりすることもあります。そのため、「何もしていないのに、植物が突然枯れた」と感じることもあるでしょう。
2-3.夏場は特に注意が必要
前述したように、夏場は水温が高くなって酸素濃度が薄くなります。また、夏は植物が成長する時期なのでよりたくさんの酸素が必要になるのです。そのため、夏場に成長したり実がなったりする植物を水耕栽培で育てる場合、酸素不足により注意しましょう。
3.酸素不足の予防方法や対処方法
この項では、酸素不足の予防方法や対処方法を紹介します。
3-1.根の状態のチェックポイント
健康な根は、白くて張りがあり成長を続けています。酸素不足などになると、根が茶色っぽく細くなり勢いもなくなってしまうでしょう。植物の成長が悪くなったなと思ったら、根をチェックしてみてください。
3-2.水位を下げる
根の一部を空気に常に触れさせていれば、酸素不足を解消したり予防したりすることができます。目安としては、根の3分の1くらいを空気に触れさせましょう。特に、夏に成長する植物を育てている場合、気温が高くなったら水位を下げて酸素不足対策をしてください。
3-3.エアーポンプを利用する
エアーポンプで直接水の中に空気を送り込んでも、酸素不足を解消したり予防したりすることができます。アクアリウム用のポンプを使ってもいいですが、水耕栽培どっとネットのような専門店でも水耕栽培用のエアーポンプを扱っているので、利用してみましょう。ただし、エアーポンプに根が絡みつくとうまく酸素が排出できないこともありますので、定期的に確認をしてください。
3-4.植物の成長を抑える
敵芯(てきしん)とうを行い、植物の成長をある程度抑えれば必要な酸素量も減り、酸素不足を予防することができます。トマトなどは放っておくと2m以上になるため、室内で育てる場合は敵芯して成長をある程度抑えましょう。
3-5.専用のキットで育てる
根が大きく成長する植物を育てたい場合は、水が10L~35Lくらい入る容器が必要です。水耕栽培の設備を自作する人は多いのですが、植物を大きく育てたいという場合は、水耕栽培どっとネットなどで販売されている、専用の水耕栽培キットを利用しましょう。そうすれば、酸素不足に悩まされずにすみます。
4.水耕栽培の酸素不足に関するよくある質問
この項では、水耕栽培の酸素不足に関するよくある質問を紹介します。
Q.水耕栽培は、根が大きくならない植物の方が育てやすいでしょうか?
A.植物の葉や茎が成長しても根が大きくならない植物、というのはほとんどありません。栄養と酸素が豊富ならば根は大きく成長します。そのため、植物全体が成長しても小さいままというものを選びましょう。
Q.エアーポンプを使えば、酸素不足になることはありませんか?
A.いいえ。エアーポンプを使っても、水溶液を入れる容器が小さすぎて根がぎっちりとつまってしまうと、根同士が絡まり合って窒息してしまうこともあるでしょう。
Q.根を空気にさらして乾燥させても大丈夫ですか?
A.はい。根は乾燥にも強いので問題ありません。
Q.水位の管理などがどうしても手が回らなくなるのですが、水耕栽培を行ってみたいのです。
A.ハイドロボールを利用したハイドロカルチャーならば、水溶液だけで水耕栽培を行うより酸素不足になりにくく、管理もしやすいでしょう。
Q.冬ならば、酸素不足になりにくいのですか?
A.夏よりはなりにくいのですが、それでも水位の管理などは必要になります。
Q.一度根が窒息してしまうと回復は難しいでしょうか?
A.はい。根が死んでしまうと回復しません。死んだ根をすべてきり落として生きている根だけにすれば、回復する可能性があります。
まとめ
いかがでしたか? 今回は水耕栽培における酸素不足の対策方法などを紹介しました。水耕栽培は室内で清潔に行えますが、水溶液のこまめな管理が必要です。根が完全に水溶液につかってしまわないよう、毎日水位をチェックしましょう。また、根の様子も観察し、必要ならば容器を交換してください。