植物工場とは
全世界で注目の「植物工場」
天候不順や四季の影響を受けず、また如何なる異常気象時においても、安定して植物の通年栽培が出来ると言われる植物工場。ハイテク農業と位置づけられるこの植物工場は、高度な工業技術は有すが、農地が狭く、国内自給率の低い日本においては、特に恩恵をもたらす栽培技術として、10年ほど前から注目を浴びています。また、時を経てこの技術は欧米諸国に広がり、今では中国、韓国、台湾、および東南アジアなどの新興国へも、その余波が伝わっている。植物工場内で栽培される植物の品目は、最もニーズの高い葉物野菜が中心となっていますが、単価の安い葉物野菜だけを栽培しては、ビジネスを採算ベースに乗せる事が難しいことから、近年では単価の高い果物や薬用植物など高機能・高付加価値植物の栽培実験が積極的に行われています。
※水耕栽培とは植物工場内で採用されている土を使わずに植物を栽培する方法です。
「植物工場」とは?
植物工場は、栽培室内の温度、湿度、光、養液、Co2濃度などの環境条件を自動制御装置で管理し、植物の育成に最適な条件を整えた生産システムのことです。従来の農業とは違い土を使わずに、お日様の光に頼る事無く栽培する為、天候不順や天災の影響を受けずに周年で計画的に安定した栽培が行える。また、土壌管理が必要なく、機械的に養液の管理を行うため、同じ作物の栽培においても連作障害を起こす事がありません。
栽培室内はクリーンな環境に保たれるため野菜に付着する菌数が極めて少ない為、栽培中は農薬を一切使用せずに栽培することが出来ます(※太陽光併用型植物工場においては使用する場合があります)。また、出荷に合わせてベストなタイミングで収穫が行えるため、安心安全な野菜を提供することが可能となります。実際、クリーンレベルに関しては植物工場によって差があるが、高度なクリーンルームで栽培している野菜に関しては食べる前に洗う必要が無い為、外食産業からは非常に重宝されているそうです。そして、菌の付着が少ないことから、冷蔵保存した場合は鮮度が非常に長持ちするといった利点もあります。
実は「植物工場」という名前は日本人が考えた造語です。英語では「Plant Factory」と訳されますが、実際のところ海外ではこの言葉はあまり通用しません。どちらかというと「IndoorHydroponics(室内水耕栽培)」と言った方が外国人の方はピンとくるかもしれません。また、植物工場というと大規模な栽培施設をイメージされますが、小さなスペースでも環境を整えて、栽培システムを導入することで植物工場を作ることが出来ます。近年ではレストラン、社内、ご自宅の空きスペースを利用したり、学校の教室を利用したりした植物工場なども増えてきています。
従来の土耕栽培と比べた際のメリット・デメリットはこちらで詳しくご紹介しています。
植物工場はこんな場所・目的に有効!
社内の空きスペース・倉庫を活用
- 栽培した野菜で副収入
- スタッフが安らぐ場所を提供
- 社内の緑化を促進
公共施設内でのアピール
- 無農薬野菜・地産地消のアピール
- 緑化のディスプレイとして
使っていないビニールハウスを活用
- 土壌栽培から水耕栽培へ切り替えて作業の簡素化を図る
- 多毛作で収益を増やす
- 無農薬栽培でアピール
農業の3K(きつい・汚い・くさい)イメージの払拭と就農者の確保
- 人材不足の解消
- 若手の雇用・将来の担い手づくりに
教育施設での活用
- 自分で育てたものを食べるという学習
- 児童に農業への関心を持たせる
- グループ作業の実習・実演として
医療・高齢者・障害者施設での活用
- 農作業をリハビリの一つに取り入れる
- 植物を育てることで気分を明るくさせる
- 自ら育てた野菜を食べることで達成感・喜びを得られる
店舗・レストランの空きスペース・駐車場等を活用
- 副収入の可能性
- 野菜の自給自足
- 採れたて野菜の提供
植物工場の種類
植物工場の種類は大きく2つに分けられます。閉ざされた屋内空間で人口光を利用して栽培する「完全密閉型」と、密閉状態の温室ハウスで太陽光を利用して野菜を育てる「太陽光利用型」があります。植物工場と聞くと、どちらかと言えば屋内での栽培をイメージする方が多いと思いますが、温室ハウスなどで行う水耕栽培は自動養液装置などを利用し、なかには空調設備を導入するところもあり、このタイプの栽培施設も植物工場と呼ばれる事があります。
1. 完全密閉型
メリット
- 完全に外気を遮断できるため虫の侵入が極端に少なくなる
- 段式栽培が行えるため、スペースの利用効率が高くなる
- 無農薬栽培を容易に行える
- 一定の環境下で栽培を行うため、安定生産が可能となる
- LEDを使用することで電気光熱費を抑えられる
- 一つの工場でいろいろな品種の野菜を同時に栽培できる(温度や養液濃度などの制約により組み合わせが悪い品種もあります)
デメリット
- 初期投資費用が高額
- 消費者の植物工場野菜に関する認知度が低い
- 太陽光利用型に比べ光熱費が高い
完全閉鎖型植物工場 | ||
2. 太陽光利用型
メリット
- 太陽の光を利用するため光熱費が抑えられる
- 完全密閉型に比べると初期投資費用が圧倒的に低い
デメリット
- 建家に断熱性がないため空調費が高くなる
- 温度管理が難しい
- 完全に密閉にすることが難しいため、虫が侵入する可能性がある
- 無農薬栽培が行えない場合がある
- 平面(1段)での栽培しかできないため、スペースの利用効率が低い
- 季節による日照の変化で栽培が不安定になる
※上記のメリット・デメリットだけで種類を選択することはできません。導入の際は専門家に相談することをお勧めします。
太陽光利用型植物工場 | ||